合格体験記2014
島方 皓平【高崎高校】
- 東京藝術大学工芸科 合格
二〇十四年三月十三日木曜日、曇のち雨。
正午になろうかという少し前。ぼくは上野駅にいた。
駅内の某カッフェで珈琲をのむためである。
その日、彼も上野にいた。
彼は東京藝術大学工芸科の生徒である。
彼は藝大の上野校地に用事で訪れたという。
ぼくは目的通りにカッフェに入店した。注文を終えて珈琲を運び、席に落ち着いた。
一年間の浪人生活をおもいながらゆっくり珈琲をのむ。
様々な出来事や自分の一年を振り返り、カップを半分あけたところで、彼から一通のメッセエジが送られてきた。それは予期せぬ祝福のメッセエジであった。
私が高崎美術学院で過ごした二年半は新しい発見ばかりの時間でした。高校二年の夏。初めてデッサンを教わった翌日、いつものように登校する自転車から見た景色が全て陰影で見えました。光が当たってカゲができることに気が付いたあの日の衝撃は鮮明に覚えており、今でも忘れられません。義務教育の美術など真面目に受けず突然美術の世界に足を踏み入れた私にとって、それはすべてが新しく、感動できるものでした。それまでやりたいことの見つからなかった私は、これがやりたかったことだ、と確信しました。
やりたいようにやらせてくださった両親はじめ親族、お世話になった講師の皆様、そして高美で出来た仲間とタカハシに感謝しています。ありがとうございました。
名塚 かんな【前橋育英高校】
- 東京藝術大学先端芸術表現科 合格【現役】
- 武蔵野美術大学映像学科 合格【現役】
私は高校3年の夏に先端芸術表現科を志望しました。アートフォーラムで作品制作をしていましたが、朝から夜までひたすら制作している日もあれば、全くやる気が起こらず寝ているだけの日もありました。12月の終わり頃から小論文の対策を始めたのですが、自分がどんなことを思って、何を伝えたくて制作しているのかについて一切考えてこなかったため、泣きながら課題文と向き合う毎日でした。そのため、自分の意見や考えをまとめるために様々な本を読み、現代アートについての知識を少しでもつけようと思いました。また、自分と作風が似ているアーティストがどのようなコンセプトを持って制作しているかを調べました。小論文と並行してファイル制作を進め、レイアウトや作品の順番などについて提出期限ギリギリまで悩みました。
一次試験が終わるとすぐに、二次試験の総合実技とプレゼンの準備を始めました。プレゼンでは教授からの質問にも受け答えしなければならないため、自分の制作についてスムーズに話せるようにし、質問を想定して臨みました。本番のプレゼンは可もなく不可もなくといった感じでしたが、やることは全てやったと思っていたし、もし受からなかったら来年はどんな制作をしたらいいんだろうと不安に思っていました。 合格発表の日に上野の掲示板に自分の番号を見つけたときは、ほっとしたとともに「これからだ」という気持ちが湧き上がりました。
私の受験期は真面目とも不真面目とも言えないものでしたが、とにかく自分と向き合い苦しんだ期間だったと思います。また、無心で制作する時間と、頭を働かせ作品について考える時間の両方をうまく切り替えることができていたと思います。「これからだ」という気持ちは入学した今でも強く持っており、誰かに何かを見つけてもらうのではなく、自分で見つけて吸収していくことが大切だと思っています。頑張ります!
茂木 亜由美【高崎女子高校】
- 多摩美術大学グラフィックデザイン学科 合格
- 多摩美術大学情報デザイン学科メディア 芸術コース 合格
- 多摩美術大学統合デザイン学科 合格
高美での一年間で私は二度大きな決断をしました。
高校卒業後それまで目指していた建築系の大学を諦め美大を目指すことにしました。元々美術は好きでしたが美大受験は実技が必須だったので美大受験を半ば諦めていました。しかし一生に関わるであろう大学進学で自分の本当に好きなことを諦めたら一生後悔するのではと思い、浪人を覚悟しました。ここが始まりだったと思います。鉛筆の削り方から教わり何もかもが初めての経験でした。夏休みに入る前から藝大の先端表現学部に興味を持ち目指し始めました。今までと違い課題をするのではなく自分の表現したいことを考えなければいけなくなり、なかなか思い浮かべられずそうした日々が苦しく感じていきました。「自分の本当にしたいことは?」そう考える毎日でした。結局時間だけが過ぎ夏休み明け、デザイン科に戻りました。ここが二つ目のターニングポイントでした。制約があるなかで考える課題は、それまでの何でもできるという自由の苦しみから解放され楽しかったです。ここまでで二回の決断をし、進路を変えましたが一年間変わらず続けてきたのは学科の勉強でした。デザイン科は特に学科に重きを置くので出来た方が圧倒的に有利です。高校のとき学科しかしていなかったので、高美で描くことが楽しくて学科はその片割れ程度でいいのだと考え力を入れすぎず継続的に出来ました。そのせいもあってかセンター試験では得意科目で高得点を取ることができ結果的に合格に大きく貢献しました。
あっという間の一年間は苦しい時期もあったけれど高美は楽しかったです。ときに自分がどうしたいのか悩んで手が止まってしまっても焦る心配はありません。そういう時間も必要です。実際何もできなかった夏休みに考えていたことは自分を知るために必要な時間だったと今は思えます。
市川 歩美【高崎経済大学附属高校】
- 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科 合格
- 多摩美術大学統合デザイン学科 合格
- 東京造形大学デザイン学科グラフィック 合格
たくさんの作品を見てください。全国の美術予備校に資料請求してみるのもいいと思うし、試験対策の平面構成やデッサンに限らず、著名なデザイナーのデザインでもいいし、偉大なアーティストのスケッチでもいいかもしれません。まず、物のとらえ方は無数にあって、それはどれも間違いなんかではなく、正解は無限にあることを感じ取ってください。
大切なのは、自分が感じたこと、感じ取ったことをどう相手に伝えるか、だと思います。自分が何を思ってその絵を描いたのか、その画面の中で何を見せたいのか。わざわざ難しいことをする必要はまったくなくて、むしろどれだけスマートに、ストレートに相手に自分の考えを伝えようか、と考えてみてください。
浪人をして、たくさん悩んだり、考えたりした時に、自分はもう現役の時のように絵が描けないな、とふと思った時がありました。何をかいても楽しくもなんともないのです。どんな構成が受かるのか、どんな色合いが目立つのか、どうすれば少ない仕事量でかっこよく見せられるか。変な知識と技にばかり磨きをかけて、それらを自分の描きたい絵と結びつけることが出来ない…。くだらない固定観念にとらわれて、自分の絵の描き方、見せ方が完全に分からなくなってしました。私の中の正解はとてもシンプルなものでした。技もクソもないような平面構成と、誰もが考えるような構成のデッサンを描いて、私は大学に入りました。なにも難しいことなんて考える必要はなかったのです。
ぜひ、自分の中の正解を探してみてください。それはとってもシンプルなものかもしれないし、もしかしたらとても複雑なものかもしれません。それを、自分のやり方で相手に伝える方法を考えてみてください。難しく考える必要はないと思います。ほどよく息抜きでもしながら。